生音収録テクニック

デジカメや携帯電話で写真を撮る事はもはや日常的に行われていますが、音を録るという行為はまず見かけません。もっとも現代の音の楽しみ方としては、市販されている音楽CDなど、完成された音源を入手して楽しむのが大半であり、自分で音を録るという発想にはたどり着かないでしょう。

「生音」の魅力

さて、一口に生録と言ってもいくつかのジャンルがあります。自然音、生活音、音楽録音などがその代表的な例で、それらの音源をマイクを使って自分なりに録音してみると意外な発見があるはずです。

8ミリビデオなどで撮影した場合は、視覚による限定された映像を見ているだけに過ぎません。ところが音だけを録音して聴いてみると、様々な想像が出来ます。つまり映像には縛りがあるのに対し、音は自由なのです。そこで今回のテーマは、自分で「生」の音を録って楽しむ「生音」についてご紹介していきましょう。

生音収録の道具たち

基本的にはMDなどの録音機とマイクさえあれば生音は出来ますが、プロは右の写真のような器材(DATレコーダーや高性能マイク他)を使ってます!

生音テクニック 自然編

水音

水音と言っても川、海、滝、湖、台所の水道やお風呂の水音と様々です。とはいえ水が何かにぶつかって発生する音なのです。都心に暮らしている人は川のせせらぎをビデオカメラで撮るとなると少々遠出をしなければなりませんが、「音」に限って言えば以外と身近なところでOKかもしれません。例えば流れのあるどぶ川にマイクを向けてみて下さい、目を閉じるとドブが清流にも聞こえるはずです。(少々極端ではありますが・・・)このように音は映像と違ってイメージを限定しないという利点があります。お台場などの人工海浜でも音だけ聞けばカリブ海のおだやかな水辺の音に聞こえたりします。

録音のポイントとしては、周囲の音(車や人の声などの街ノイズ)が入ってこないように出来るだけ音源に近づく事です。また、早朝や深夜に収録することにより周囲の音を抑えることも出来ます。

都心、郊外を問わず生息しているものの代表として、スズメ、カラスがいます。ドラマのイメージでは、朝はスズメ、夕方はカラスといった扱いをするのは周知の通りです。もっともこれはイメージであり、場所によっては朝一番に鳴くのはカラスだったりします。また、四季折々の鳥を集めてみるのも楽しいと思います。

さて、実際に鳥を録る時のテクニックとしては、まず人間の存在を気づかせないようにする事です。普段から鳥の集まる場所と時間をチェックし、マイクを仕掛けておきます。マイクとレコーダーを結ぶケーブルを延長し、物陰に隠れて収録するわけです。ただし、全体的な鳥の鳴き声を録る場合は、街の音が風に乗って流れてこないポイントをマイクの向きを変えて探し収録します。このコツをつかめば他の音を録るときにも応用できます。

生録で最も難しい音である風の収録、そもそも風自体はよほど強くない限り音になりにくいものです。しかも物にぶつかり、空気が切れて渦(カルマン渦といいます)が生じた時にはじめて音になるのです。風を録るのがなぜ難しいかというと、マイクが直接風に当たるとボコボコというノイズばかりになってしまうからです。この現象を業界では「フカレ」といいます。ではマイクが吹かれないようにするにはどのような工夫をすれば良いのでしょうか?

マイクに風が直接ぶつからないようにウレタン(スポンジ)をかぶせる、これは基本的なテクニックです。テレビのニュースなどでレポーターのマイクにかぶせてあるのを見た事があるでしょう。更に裏技としてスポンジの上にストッキングをかぶせるとGoodです。ただし、これらの対策にも欠点があります。ウレタンをかぶせ過ぎると音質がどんどん悪くなるからです。特に高音が落ちて、こもった感じになってしまいます。

因みにプロ用の風防機材としてはウィンドスクリーンを内蔵したカゴを使っています。ウレタンでマイクを覆うよりも大型になりますが、カゴの内側のネット状の構造により風のエネルギーを効率よく緩衝しているのです。しかし、風防処理を駆使したとしても限界はあります。やはりフカレないようなマイクポジションを探すこと、つまりマイクアレンジの工夫が大切なのです。

生音テクニック 生活編

生活の中での身近な音と言えば、調理音があります。切る、煮る、焼く、炒める、揚げる、言葉で書き出しただけでこれだけの種類の音があります。音を録るポイントとしては、「うまそうな音」、或いは、その料理が何なのかをイメージ出来ることです。

包丁で野菜を切る

台所ノイズの代表的な音です、録音のポイントとして、あまりマイクを近づけると音が歪んでしまうので程よい距離を見つけよう!

みそ汁、煮音

あまり大きな音ではないので、なるべくマイクを近づけて、ガスの音よりも煮音がメインになるポジションを探してみよう。

音の組み立て

今まで録った音を組み立て、さらに雀の音をプラスすると・・どうです! 見事な朝食風景の出来上がりです!

生音テクニック 街ノイズ編

市街地にお住まいの方は、最も身近な音と言えばやはり車、バイクなどのトラフィックノイズです。歩道や交差点のような至近距離での聞こえ方もあれば、ビルの屋上や河川敷などの広い、或いは高い位置での聞こえ方もあります。毎日聴いている音ですのでイメージしてみて下さい!

交差点・・・通勤、通学途中で必ず出くわすポイントです。まず、車やバイクが目の前で往来しているだけに、とても動きのある音が録れます。しかーし!これが案外うまく録れないのです。人間の耳というのはとても良くできていて、小さな音は耳をすまし、大きな音はそれなりに聴きこなせます。ところがマイクは正直なもの。音の強弱を都合良く調節したり、選択できないのです。そこで、音源に対する距離や方向などのマイクアレンジが必要になってきます。音源に近いほど通過する車の音の動きははっきりしますが、音が歪んでしまうことがあります。そのような時は、マイクの角度を音源から少し外して見ましょう。また交差点から、やや距離をとることにより全体的なトラフィックノイズを録ることが出来ます。

サラウンドの効果音はどのように録音している?

最近はDVDの普及などで、サラウンドを楽しんでおられる方も多いかと思いますので、サラウンドの効果音の収録方法を最後にご紹介します。

サラウンドで効果音を収録する場合、いくつかの方法がありますが、今回はマイクを4本使いマルチチャンネルレコーダーで収録する方法をご紹介します。まずマイクですが、一般的には単一指向性のものを写真のようなマイクアームを使い四方向に取り付けます、もちろん先程ご紹介した風対策をします。そしてその音を録る為、マルチチャンネルレコーダー(今回のセッティングでは4ch以上)を用意し、それぞれのマイクの音を別々のチャンネルに収録します。これで、フロント側L/Rチャンネル、サラウンド側(リヤ方向)L/Rチャンネルの音が録音できます。また、状況によっては更にマイクを一本たしてフロントのセンター用として収録する場合もあります。

まとめ

音の選択が出来る優れた耳を持つのが人間、或いは動物です。操作、工夫をしなければねらい通りの音が録れないのがマイクロフォンの特徴であるということがご理解いただけたでしょうか。難しいとは思いますが、イメージ通りの音が録れた時の喜びはなかなかな物です。映像と音が当たり前のように浸透している現代にあえて想像豊かな音の世界を覗いてみませんか!

コラムトップへ戻る